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舞台「少年陰陽師 現代編・遠の眠りのみな目覚め」感想(2月26日公演)

いつものごとくタイトルそのままですが、結城光流先生の『少年陰陽師』シリーズのうち「現代編」といわれる作品の中の1冊「遠の眠りのみな目覚め」が舞台化されたので観劇してきました。

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200席にも満たない築地本願寺ブディストホールの土日祝はチケット戦争が激しすぎるのでは?と普段から仕事がお休みな水曜日(2020年2月26日)の公演へ。

ちなみにチケットは申し込み期間中にたまたま京都に行く機会(六道珍皇寺様の「小野篁公御命日ご結縁詣」)があったので、1日目に六道珍皇寺貴船神社、2日目に晴明神社でじい様へご挨拶してから申し込んだ結果、一緒に行く友人が最前列を引き当ててくれました。そしてキャパへの不安から友人と2人でそれぞれ2枚申し込んだため見事にダブりましたが、結果的に同じ原作ファンの方にお譲り&開演前と閉演後にお話しできたのは嬉しかったです。ファンの間では普段こういう機会がないためとても新鮮で、もっとこういう機会があってもいいのにな〜とも思いますが、多分「新刊発売を機にオフ会を」とかだと現代編はともかく平安編の場合は話の内容的にみんな死んでいるのでは、と思ったり。

 

公演5日目だったのでそれまでTwitterのTLには感想が流れてきていまして。キャスト発表の時点で「勾陣がいる……」となった勾陣役のあさおか倖さんがやっぱりめちゃくちゃ勾陣姉さんだとか、原作者である結城先生が絶賛して何度も劇場へ足を運んでいらっしゃるとか、原作ファンが複数回チケットを取り始めた様子にそわそわしながら当日に。

なお、少年陰陽師の公式関係で出かけることなんて滅多にないから、籠目&花車の訪問着、竹の袋帯六道珍皇寺様の北斗星篁公守、籠目・蛍石タンザナイト(12月の誕生石)の自作簪&少年陰陽師の15周年記念簪というガチコーデで挑まさせていただきました。

竹の袋帯は、職人さんもいらっしゃる催事で一目惚れして「篁様といえば竹だしいつか結城先生のサイン会とかあればガチコーデできるし」と使う予定もないのに昨年の初夏にローンを組んで仕立てていただいた品物でして、いやはやまさか先に現ステが来るとは……って感じでした。人生何が起こるかわからない。

 

 

※以下ネタバレご注意※

 

 

原作ファンとして舞台「少年陰陽師 現代編・遠の眠りのみな目覚め」を観た率直な感想としては、幼馴染組(特に螢と比古)のわちゃわちゃ、平安編を読んでいるからこそより感じる昌浩の少年み、十二神将の「実在している」感、レストラン組のテンポ良く勢いのある演技、平安編読者が「あれのことね!」と反応してしまう要素、若宮威の妖しさ、アンサンブルのキレのいい動きなどなど、気になる点もありましたが総合的には満足です。

作品全体の流れとしては、時系列が違かったり、発生する場所が違ったり、場面における登場人数が増えていたりと、だいぶ変えてきた感じはありました。ただまぁ舞台化ですし時間内にまとめるための構成とか舞台上の見栄えの問題とかありますし、小説として面白いものがそのまま視覚化されて面白いかというと、こういう題材の作品は表現が難しいことも多いし。なので大半の変更点は想定&許容範囲内です。前述したように良かった点も色々ありました。

 

自他共に認める小野篁好きかつ、籠目編が刊行された際に「子孫!?!?」となって以降小野家推しになった人間なので螢はやはり注目して見ましたね。ちなみに螢が登場するまでは少年陰陽師内だと勾陣が1番好きな女性キャラだったので、おそらく時にはお茶目なところもあるかっこよくて戦える女性がツボなんだと思います。

キャストさんが発表になったときは「Aの方とBの方の目つきを足して割った感じが好み」と友人に言っておりまして。でもまぁ静止よりも重要なのは動きだよなぁとか色々思っていたので、小野家過激派な傾向にあるが故に(期待はしないぞ……)と思いながら観に行ったんですよ。結果、舞台上にいらっしゃるときはほぼ見ていました。

なんか最初のレストランの場面で砕けた態度になってからの昌浩や比古への接し方が完全に螢だな、と。

いやでも私も小野家過激派(仮)としてそんな簡単にほだされて良いのか!?という気持ちはあったんです。あったんですけど…… 林田さんが倒れてから目を覚ますまで、螢が白いドレスの女から林田さんを守っているじゃないですか。正直(頭を抱えつつ膝枕……?え、なんですその美味しいポジション!!!)ってなってました。まだ序盤なのにですよ?もうね、そう思った時点で完敗ですよ。というかあれですね、小野家過激派の過激になりえる推し対象が原作だけでなく現ステにも広がっただけですね。

そのあともね、可愛い。というかもう存在しているだけで輝いて見えるレベルだったので、そういう風に感じさせてくれた橘咲希さんに感謝です。というかもう螢を演じてくださったの方の苗字が「橘」というのにすら反応してしまうんですけれど。

 

比古に関してはなんかもうレストランで注文する際、勝手にいちごのケーキと決められてしまったりとか、飲み物は自分でちゃんと選んだ感とか、持っていたグミ(果汁グミぶどう味)を自分が食べる前に全部騰蛇に食べられちゃったりとか、もぐもぐタイム2回目でクッキーの包装だけを渡されてしょんぼりしていたのとか「可愛い」しかなかったです。現ステの不憫枠かな?と思いつつとてつもなく可愛い比古が見れました。ただそれでいて、白いドレスの女が出てきたときの引き出しを開けようとする動き!足まで使っているのが男らしくて好きです。

あとレストランでの昌浩とのやりとりや幼馴染組のなかで1人だけ大道具の上にいるやんちゃ感、八岐大蛇の話(詳しくは珂神編をチェック!)、職人のところから戻ってきた太陰とのやりとりなども生き生きしていて良かったです。

 

そしてですよ、なんといってももぐもぐタイムでの螢と比古の組み合わせには完全ノックアウトです。この2人の組み合わせがこんなにも可愛いなんて私は思ってもみなかった…… 原作だとそうでもないけれど、現ステだと昌浩&彰子、螢&比古って感じが強いので余計そう感じるのでしょうけれど、話の中心が舞台中央や前方なときでもまぁ奥にいる螢と比古に目がいってしまいますよね(もちろんメインも見ていますけれど)。

というかもう平安編で螢の夢について語られていなかったら、この2人の組み合わせありでは!?とならざるをえないレベルでとても良かった…… いやでも平安編と現代編は厳密には別人物なのだから可能性は0%ではない?次の現代編ではもっとやりとりが増えるととても嬉しいです。比古と螢だけではないけれど平安編がああいう感じなので、長生きして欲しいとか贅沢は言わないからほんともう幸せになってほしい。

ただ螢は終盤の展開変更によりじい様に見せ場が取られてしまったのは残念だったし、比古ももっとかっこよく活躍してくれている場面を入れてくれたらもっと嬉しかったですね。

 

原作でも守られポジションの彰子は、現ステだとよりお嬢様度が増していた気がするというか、完全に非力なお姫様ポジですねって感じでした。いやそれも可愛いですけれど。

レストランでの昌浩に対して粘るシーンは、彰子の気持ちとか制作側の意図とかも分かるのだけど、なんだか仲間外れが嫌で駄々をこねているわがままお嬢様っぽさが出ている感じがしたので、もう少しセリフや話すテンポなど工夫できなかったかな〜と思いました。素人の感想ですが。

若宮威との初対面の演技は原作要素が強かったのもあってリアル彰子という感じはしましたね。ただ、彰子の見せ場ってどこだったんでしょう……?もう少しセリフに重みというか存在感が欲しかったような気もします。

 

昌浩に関しては、良くも悪くも未熟な子どもだなぁと感じました。一生懸命で猪突猛進。主人公ということで小野家とは別の意味で思い入れが強いし、修羅場をくぐり抜けて成長している平安編の昌浩を見ているから余計に感じるのかもしれませんが。幼馴染組や十二神将やじい様とわちゃわちゃしているときは現代編の昌浩っぽいなと思ったりもしました。術を使っているときの立ち姿はかっこよかったです。

あと昌浩が孫発言をスルーしていたのは平安編に慣れている身としてはやっぱり驚いてしまいますね。私の脳内で平安編の昌浩が「孫言うな!」と言っていました。よくよく考えたら現代編ではじい様との仲が良好なためか「孫」に反応しないんですが、原作を確認したらざっきーズは「安倍の次代」呼びなんですよね。まだ未熟なのに「孫」呼びで揶揄わないということは揶揄い甲斐がないからということなんでしょうけれど、ざっきーズにとって「晴明の孫」は平安時代の昌浩だけなんだなぁとちょっとジーンときました。

で、孫云々は原作からの設定なので寂しい気持ちもありつつ納得なんですが、双頭の大蛇戦での昌浩の態度には正直白けてしまいましたね。持論を主張する双頭の大蛇に対する「何言ってんのこの人たち意味分かんないんですけど」感がちょっと…… 声が小さくて聞き取りづらかったけれど、そういった意味のことを実際セリフとして口に出していましたし、これはキャストさんの演技力というよりは脚本とか演出の問題ではないかと思うんですけれども。

確かに昌浩だったら例えば番外編みたいなお話で、わーわー喚いている異形の存在に対して「(自分1人の力だけでも調伏できるような)力の弱い妖が騒いでるなぁ~」みたいな態度を取ることはあるだろうけれど、自分にとってすごく大切な存在である彰子が危機的状態に陥っているのに敵である大蛇にそういう態度をとるとかないですから。しかも結局勾玉頼みかよ……という。原作だと騰蛇の力を借りているけれどちゃんと自分の力で双頭の大蛇の首を取っているのに。というわけでここは完全に解釈違いでした。

大蛇のお二人の演技が白熱していた分、温度差が目立つのは意図的なのか。というか原作と比べてあんなに大蛇で尺をとって大物感を出しておいて結局これかよ……みたいな?昌浩のこと好きなのに、現ステでは双頭の大蛇を応援してしまいましたよ私は。

あと双頭の大蛇を倒して林田さんは目が覚めたけれど彰子が目覚めないシーン。昌浩の子供らしさ全開というか、そこも良さではあるんですが(林田さんたちにせめて何かフォローらしいことを……)と思ってしまいました。原作では藤原邸で螢と一緒にいた彰子が倒れて安倍邸に運び込まれ、在宅していた昌浩はそこで知る、という感じなので。(誰か、せめてアフターケアを……してあげてください……)と思わずにはいられなかったです。描かれていないだけなら良いなぁ

 

ちなみに現ステにおける個人的な解釈違いはもう1点ありまして。今作でのラスボス的存在である黒悪霊との戦いなんですけれど、(いまあなたご自分のこと「天草四郎時貞」と仰いました……?)という。九尾と同様に歴史における敗者を出したかったというのは分かりますけれど、名前が出たことで得体の知れないが故の恐ろしさが一気になくなってしまった感じです(もちろん強敵感はきちんとありますけれども)。かつ背景が語られるわけでもないから、天草四郎時貞である必要性を感じられなかったという。というかそもそも天草四郎時貞って島原の乱のとき少年ですし、なんだかこれを書いているうちに敵の名が「天草四郎時貞」なのは私の聞き間違いだったのでは……?という気分になってくるくらいよく分からないです。まぁ個人的には現ステだけの設定で原作への逆輸入がされないなら許容範囲ですが。

あと個人的には黒悪霊のヴィジュアルは劇団☆新感線の作品に出てきそうだな、と思いました。もう少し人外っぽさがあっても良かったのでは〜と思ったり思わなかったり。

 

さてさて明るい話題に戻ります。

 

同じく人外の存在である十二神将と高龗神はやっぱりオーラがありました。十二神将は人身なのに立ち振る舞いがすごくてですね。登場すると「十二神将!」という存在感、振る舞い方や声のトーンなども最高でした。あとね、OPみたいな部分のときに思ったのですが、騰蛇・青龍・六合が身長高いのはもちろんなんだけれど(足…長いですね……)となったし、閉演後に1階ロビーで原作ファン同士語り合っていたら六合役の星達也さんが階段から駆け下りて来るという場面に2度も遭遇し、(出待ちじゃないんですごめんなさい〜)となりながら思わずこっそり目で追ってしまったし、その場の面々で体格に関する感想を言わずにはいられなかったですね。

 

先ほども書いたように、あさおか倖さんの勾陣はそれはもう期待を裏切らない勾陣っぷりでした。出来るお姉さんオーラ全開で、舞台上にいるとメインよりも目で追いたくなる素晴らしさ。原作ファンとしてはヴィジュアルも演技も花丸満点です。

開演前に原作ファンの方とお話しした際、「勾陣は基本ずっと腕を組んでいる」と聞いたので気にして見ていたら本当にずっと腕を組んでいて。腕を組んでいる勾陣、ほんと勾陣って感じでした。

 

個人的に1番インパクトが強かったというか想像とのギャップが大きかった十二神将は太陰でしたね。登場時の第一声を聞いた瞬間(めっちゃ可愛いんですけど!?!?)となっていました。なんというか、騰蛇・六合・青龍は想像がつくし、実際見ても(うんうん、そういう感じだよね)だったんですが、太陰に関しては可愛いの暴力。結城先生も仰っていた足ぶらぶらが可愛いのはもちろんなんですが、闘将と一緒にいる太陰がほんと可愛い。身長差もそうだし、幼さもある動きが最高ですね。

あと「職人のところにいた雑鬼を〜」のところとか、そのあとの比古との絡みとかは(ありがとう!おかわりお願いします!)って感じでした。

 

騰蛇も騰蛇で、レストラン組に「神様!」と拝まれたり腰のタッセルを触られたときの反応とか正直可愛くてですね。もっくんを可愛いと思ったことは数あれど騰蛇を可愛いと思ったことは中々ないんですけれど、あれは可愛い。

あとアドリブというかもはや日替わり要素といってもいい、幼馴染組のもぐもぐタイム。比古が持っていたグミを袋ごとザーッと傾けて口に入れて、それで喋れなくなって口を手で塞ぎながらもごもご言っていたり、そのあとひとり上手の端に移動して頑張って噛んで飲み込んでいたり。(あ〜これは間違いなく正真正銘もっくんの本性ですわ)とならざるをえなかったです。

 

六合と青龍もファンが想像する言動そのままで登場してくれた、という感じでしたね。夢うつつから覚めたじい様と京都から戻ってきた青龍と六合の会話とか、じい様から頼まれて行動に移す場面でのじい様への対応とか再現度が高すぎました。青龍がじい様と目線を合わせてからの「必要になったら呼べ」みたいなのとか、じい様に対して表情が柔らかくなっている六合とか。時間の関係上仕方なくはあるんですけれど、もっと活躍を見たかったです。もったいない……

そうそう、帰りに電車へ乗ってから結城先生の呟きを拝見したんですけれど。

もしやあそこ?となっております。あの、じい様が十二神将に指示を出しまして、六合がそれを受けて動く場面なんですけども。

上演中は中央付近の最前列という席の関係上、どうしても上手や下手で正面を向いているときの表情が見えなかったりとかやっぱりあるわけです。だからその場面でがっつり六合の顔が見れたときに(あれ?現ステの六合は表情豊かなの?無表情が鉄板の六合にしては表情柔らかくない??)と思ったんですが、そのあとは真面目な雰囲気のシーンばかりだったからまぁ表情が真面目になるのは当然。そのため(まぁそれもキャストさんの個性よね〜)くらいのノリでいたんですが、もしそうなのだとしたら尊い

 

あと青龍に関してはなんかもう要所要所で(平安編だったら絶対にありえないやりとりが眼の前で繰り広げられている……!)という感じでした。平安編だとまだまだ昌浩を認めていない青龍なので、(まさかあんなお言葉が出てくるとは……)とか(ギスギスしていない騰蛇と青龍の掛け合い……!)とか思ったりしていました。そういえば昔は「昌浩が十二神将の主になったらどんな感じになるのかな〜 青龍や天后とも徐々に進展するのかなぁ」なんて呑気に思っていたのに、今の原作(平安編)の流れだとなんかもう、あれですよ…… 騰蛇と軽いやりとりをしている青龍は現代編でしか見られないのではないかと思ってしまいますね。

 

というか全体的に十二神将のやりとりにほのぼのしました。「こういうの何て言うんだっけ?」のやり取りとか、じい様の「ちょっと」を言い直したりとか、1000年前から生き続けている十二神将ならではの会話とか。衣装もそれぞれの個性が出ていて最高でした。

ただ最前列の弊害というか、戦っている十二神将も素敵な雰囲気は出ていたんですが、近すぎて動きがよく分からなかったんですよね…… 回し蹴りみたいなのをしたのは分かるけれど、どこがどうなってどう当たったのかみたいな細かい部分が分からない、みたいな。いやまぁ人身をとっているとはいえ闘将だから目が追いつけないのは当然といえば当然ではあるんですが、あと数列後ろの席でも観てみたかったです。

 

高龗神に関しては、キャストが発表された際に「原作より登場人物が減っているのに高龗の神はいらっしゃるのですね……?高龗神ってそんなに登場していらっしゃったっけ?」となったんですが、いざ観て納得しました。高龗神に語り手となっていただくなんて、なかなか贅沢な作品ではありませんか。亀田鈴奈さん演じる高龗神は神秘的かつ神々しかったです。

 

そうそう、神秘的といえば上村南美さん演じる白いドレスの女も幽霊として怖いだけでなく神秘的というか幻想的な雰囲気が出てきましたね。やはり手を伸ばすシーンが印象的でした。

 

和泉元彌さん演じるじい様は、どちらかというとお茶目感が強いじい様でしたね。孫である昌浩が大好き、という感じも強く出ていました。最初にじい様が登場した際に持っていた本の書名が『昌浩成長記』だったりとか。昌浩に対してはどっしり構えているようなじい様に慣れているので、夢に入ろうとする昌浩を引き留めるなど現ステのじい様は人間味があって新鮮でした。

「昌浩ー!」と叫びながら家の中を走り回るシーンはもちろんのこと、そこからの昌浩と2人で「そろり、そろり」は(めっちゃなかよしやん……)って感じでした。そうそう、2席隣の方がじい様から「池の鯉」と呼ばれていたのでどうやら客席は安倍邸の庭にある池のようです(笑)

 

というのが平安編にも繋がりのある現代編メンバーの感想なのですが。正直、自分が大きく反応するのは幼馴染組とか十二神将とかそういう面々だと思って当日は劇場に行ったんですけれども。いやまぁ凄かったです、レストラン「テールライト」組(小池則子・林田日菜実・岩本雅也)と若宮威。もし自分が『少年陰陽師』という作品を読んだことがない状態で現ステを観に行っていたら、「推す!!!」となるのはこの面々なんじゃないかと思ったくらい存在感がありました。

 

まずはレストラン「テールライト」組なんですが、最初から個性が強い。前半の「幽霊を見たことがあるか、信じるか」のところとか、幽霊騒ぎを彰子にバレないようにしたくて何度も昌浩を遮るところとかコメディっぽさのある部分が3人の息の合ったテンポと動きの良い演技がもう最高でした。騰蛇のことを「神様」と手を合わせて拝んだり、騰蛇の腰についた真っ赤なタッセルを触ってしまうの、そういうのに慣れていない騰蛇の挙動不審な感じも含めて最高でした。わちゃわちゃしているの可愛かった……

レストランのオーナーである小池則子という人物に関しては正直原作はもう脇役なので、なぜ性別を変更してまで松本梨香さんという大物キャストさんを起用?と思っていたんですが、舞台としてはこういう小池オーナーのキャラ付けの方が観客としては好感を持てましたね。さすがというか演技もとても良かったです。そして正直に言うと「従業員」を噛んでしまったのも可愛かったし、言動がしょっちゅうツボに入っていました。

そしてTwitterで何となく把握していた「ゲットだぜ!」でテンションが上がったのはもちろんなのですが、その後の男性客の「効果バツグン」や林田さんがトレイに乗せて持ってきたドリンクへの「キミに決めた」もポケモン初代とともに育った人間の急所に当たりました。上手での演技だったため男性客のお顔があまり見えなかったんですが、この方はどなただったのでしょう……?

物語のキーとなる存在のひとりである林田さんも、原作だと大人しめな女性ですが現ステでは結城夕夏さん演じるパワフルな感じが可愛かったですし、だからこそ後半でのギャップも映えていました。原作だとほとんど登場しない岩本シェフ役の帯金遼太さんもキャラとしての膨らませ方も良かったですし、メッセンジャーとしての役割が増えていたのは嬉しかったですね。

まぁ、設定面では林田さんを天涯孤独にする必要はあったのか、みたいな疑問はありますけれどね。

………ところでレストランの名前は原作では登場しなくて、現ステでは「テールライト」なんですが、松本梨香さん演じる人物がオーナーで「テールライト」だと某電気ねずみを連想してしまうのは私だけでしょうか?(笑)

 

あとそう、Aキャストで岩本雅也を演じられている服部武雄さんがBでは呪われた大石を演じられていますけれど、最前列で観た感想としては目力と震えの表現が凄かったですね。最初のシーンなので本来なら昌浩と騰蛇に目がいくところだと思うのですが、いやぁ、正直メインの2人そっちのけで(うわ…何この人演技すご……)と思いながら見ていました。服部さん演じる岩本シェフもきっと素敵なんでしょうね。

 

怪しさ満点な雰囲気で登場する若宮威に関しては、原作を読んだときに受けた印象と全く違っていて、自分でもびっくりしました。原作だと彰子寄りな視点のため「若宮威?彰子に近く不届きものが……!」って感じだったんですよ。あと現ステでは名前しか出ていなかったですけれど原作ではがっつりお姉さんも彰子と接点がありまして。で、原作の若宮威はお姉さん大好きを前面に出しているというかシスコンっぽさがあるし、なんだかヤンデレの素質もありそうな感じなんですよね。あまりヤンデレとか好きではないので、原作を読んだときは正直苦手な存在でした。

それなのに、現ステで松田翼さん演じる若宮威を見ていると、どんどん(いいぞ!もっとやっちゃえ……!)みたいな感情が出てきまして。別に怯えている彰子が好きとかではないので、おそらく松田威(誤字ではない)の狂気も含んだ具合が私の好みドンピシャなのだと思います。これを機に原作の若宮威も好きになれるかは現代編3巻の展開に期待したいところです。

 

ダンスアンサンブルの方々はオープニング的な冒頭からインパクトがありましたね。おそらく石岡美羽さんだと思うのですが、目力に(ひょえっ……)と思いながら冒頭のダンスを見ていました。陰陽師という特殊効果が必要になる舞台、かつ2.5次元作品ですから色々とどうするのかなぁと思っていたのですが、このアナログ感は逆に新鮮ですね。あと皆さん早着替えがすごい。途中で(アンサンブルの方って何人いらっしゃったっけ?)となっていました。

あとパーティー中のダンスや高龗神が登場する際の眷属っぽい動きはもう爪先から指先まで凝視していました。個人的推しは高橋舞帆さんです。さすがに対大蛇と対黒悪霊のときは無理でしたが、高龗神が下界に降りてらっしゃったときなんて目の前だったのでひたすら見ていました。そのときお隣にいた大丸美鈴さんの丈の長いドレスを生かした踊りも印象的でしたね。あと永島琴海さんは(なにこの少女と大人の女性の中間的美しさと可愛さを持っているタイプ。完璧……)と思っていました。まだ17歳とのことなのでこれからの活躍が楽しみです。

対大蛇と対黒悪霊のときのアンサンブルは得体の知れない感じがある動きが格好良さもあって良かったんですが、欲を言えばもう2〜3列後ろから観たかったですね。ちょっと近すぎて全体像の把握が難しかったです。馬跳びが何を表現したかったのか分からなかった……

 

 

そういえば、原作と違って病院のシーンが増えたためお医者さんと竹橋&風間ナースが登場していましたが、お医者様を演じられていたのはアンサンブルの小見山雄さんで良いんでしょうか?なんとなくお顔がそんな感じ。

原作だと看護師さん自体は登場するけれど役割は全然違うので、昌浩に対しても普段そういった摩訶不思議現象に対して縁のないレストラン組に対しても、緊迫感を漂わせる存在として一役買っているな、と思いました。

 

 

登場人物以外、例えば演出だとじい様や昌浩が術を使ったとき照明によって床に映し出される五芒星とか、対黒悪霊での五芒星の表現方法とか良かったですね。特に照明の五芒星は二重になっているのが高ポイントです。

音楽の雰囲気も作品に合っていて違和感なく聴いていられたのですが、ただ一箇所だけ、おそらく対黒悪霊のときではないかと思うのですが、音楽がいきなり大音量でバーン!と鳴ったときはびっくりして集中力が切れました。数秒後に普通の音量に戻ったんですが、そこの音楽はバーン!ではない方が個人的には好みです。あとほとんどのキャストさんがマイクを使っていない分、音響で声が聞き取りにくい部分があったので、そこはもう少し改善してくれると嬉しいですかね。

 

 

衣装とか小物とか暗転中の道具の持ち運び方が〜とかまだまだ書けることはあるのですが、この時点で1万字超えているのでそろそろ自重します。あとそろそろ自分の記憶力に自信がない。ふと思い出したら加筆するかもしれないです。 

 

色々と書きはしましたが、総評としては「面白かったので現代編3巻が出版されて続編をやることになったら是非観てみたい」です。